以下の項目に該当する方は要注意です
- 健康診断でコレステロール値が高いと指摘された
- 健康診断で中性脂肪値が高いと指摘された
- ファーストフードなどの脂っこい食べ物をよく好んで食べる
- ご親族に脳梗塞・心筋梗塞になった人がいる
- 肘や膝の関節付近が黄色くなった
- 高血圧や糖尿病の治療を受けている
上記のような項目に該当する方は脂質異常症(高脂血症、高コレステロール血症)の可能性があります。脂質異常症は発症初期段階の自覚症状を感じにくい特徴があり、知らない間に病状が進行していきます。上記のような項目に一つでも該当される方は一度ご相談して頂ければと思います。
脂質異常症とは
脂質異常症は、生活習慣病の一つであり、血液中の脂肪濃度(主にコレステロールやトリグリセリド)が正常値を超え、高い状態が持続する病気です。この状態が長期間続くことで、さまざまな健康上の問題が引き起こされることがあります。
血液中の脂肪濃度が過剰になると、全身の血管に悪影響を及ぼし、動脈硬化という症状を引き起こすことがあります。動脈硬化は、血管壁が硬くなり、血液の循環が悪化する現象です。血液の流れが悪化すると、血管内で血液が凝固し、血栓ができるリスクが高まります。
血栓ができると、さらに血液の流れが悪くなり、血管に大きな負担がかかることになります。この状況は、血管が破裂する危険性を高めることがあります。血管の破裂は、重大な合併症を引き起こす可能性があり、脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクが増加します。
脂質異常症の原因はさまざまで、遺伝的要因や食生活、運動不足、肥満、糖尿病、高血圧、喫煙などが関与しています。脂質異常症の予防としては、バランスの取れた食事、適度な運動、喫煙の禁止、アルコールの摂取制限、適切な体重の維持などが挙げられます。
脂質異常症は血液中の脂肪濃度が過剰になる病気であり、動脈硬化や血栓、血管破裂のリスクが高まることで、さまざまな健康問題が引き起こされます。健康的な生活習慣を心がけることで、脂質異常症の予防や改善が期待できます。
脂質異常症の原因
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の濃度が異常に高くなる状態を指します。原因によって、主に二つのタイプに分類されます。
原発性脂質異常症
原発性脂質異常症は、遺伝的な要因が主な原因で、体内での脂質代謝がうまく働かないことによって発症します。脂質異常症を引き起こす遺伝的な要因は、主に次のようなものがあります。
- 家族性高コレステロール血症:LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が遺伝的に高くなる病気で、動脈硬化のリスクが高まります。
- 家族性高中性脂肪血症:遺伝的要因により、中性脂肪が高くなる病気で、心臓病や膵炎のリスクが高まります。
二次性脂質異常症
二次性脂質異常症は、生活習慣や他の疾患が原因で発症します。主な原因は以下の通りです。
- 生活習慣:食生活が偏っていたり、運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取など、悪い生活習慣が脂質異常症を引き起こすことがあります。
- 糖尿病:インスリン抵抗性やインスリン分泌不足など、糖尿病が脂質代謝に悪影響を与え、脂質異常症を引き起こすことがあります。
- 肥満:肥満は、悪玉コレステロールや中性脂肪が上昇する原因となり、脂質異常症を引き起こします。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、脂質代謝が低下し、脂質異常症を引き起こすことがあります。
- 肝機能障害:肝臓は脂質代謝に重要な役割を果たします。肝機能障害があると、脂質異常症を引き起こす可能性があります。
- 腎疾患:腎臓に異常がある場合、脂質代謝がうまく機能しないことがあり、脂質異常症を引き起こすことがあります。
- 薬物:一部の薬物(ステロイド、抗精神病薬、免疫抑制剤など)が脂質代謝に影響を与え、脂質異常症を引き起こすことがあります。
脂質異常症の治療は、原因に応じて対処します。原発性脂質異常症の場合は、遺伝的要因が大きいため、薬物療法や遺伝カウンセリングが必要になることがあります。二次性脂質異常症の場合は、原因となる疾患や生活習慣の改善が重要です。例えば、食事療法、適度な運動、喫煙やアルコールの摂取量の管理などが対策として挙げられます。
また、脂質異常症の状態に応じて、薬物療法が必要になることもあります。
脂質異常症の症状
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールやトリグリセリドなど)の濃度が正常範囲から外れる状態を指します。脂質異常症は主に以下のような症状が現れますが、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
- 黄色腫(xanthomas):皮膚や腱にコレステロールが沈着し、黄色いしこりや結節が形成される症状です。主に関節の周囲、手のひら、足の裏、アキレス腱などに現れます。
- 黄斑(xanthelasmas):まぶたに小さな黄色い斑点が現れる症状です。これは、コレステロールが皮膚に沈着しているために起こります。
- 動脈硬化:高コレステロール血症や高トリグリセリド血症が長期間続くと、血管壁に脂質が沈着し、動脈硬化が進行します。動脈硬化は、心臓、脳、腎臓などの臓器への血流が悪くなり、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの症状が現れる原因となります。
- 膵炎:高トリグリセリド血症の場合、膵炎のリスクが高まります。膵炎は、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。
脂質異常症は、遺伝的要因や生活習慣(食事、運動不足、肥満、喫煙、飲酒など)が原因で発症します。自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断や血液検査によって早期発見・治療が重要です。適切な治療や生活習慣の改善によって、脂質異常症による合併症のリスクを軽減することが可能です。
脂質異常症の重大な合併症
脂質異常症は、未治療のまま放置されると、将来的に心血管系イベントの合併症を引き起こすリスクが高まります。以下に、主な心血管系イベントとそれに関連する合併症を詳しく説明します。
- 心筋梗塞:動脈硬化が進行し、冠動脈(心臓へ血液を供給する血管)が詰まることで心筋梗塞が起こります。心筋梗塞は、心臓の一部が壊死し、心不全や不整脈などの合併症が現れることがあります。重篤な場合、急性心筋梗塞により死亡することもあります。
- 脳梗塞・脳出血:動脈硬化が進行し、脳への血流が遮断されると、脳梗塞が発生します。また、動脈硬化により血管壁が弱まることで、脳出血が起こることがあります。これらの状況は、麻痺や言語障害、認知機能の低下などの後遺症を引き起こし、重度の場合は死亡に至ることもあります。
- 末梢動脈疾患:動脈硬化が四肢の血管に影響を及ぼすと、末梢動脈疾患が発生します。これは、歩行時の足の痛みやしびれ、傷の治りが悪い、壊疽(組織の壊死)などの症状が現れます。重篤な場合、切断が必要になることもあります。
- 大動脈瘤:動脈硬化により大動脈の壁が弱まると、大動脈瘤が発生することがあります。大動脈瘤は無症状で進行することが多く、破裂すると大量出血を引き起こし、死亡に至ることがあります。
脂質異常症の検査
脂質異常症の検査は、血液検査を用いて行われます。主に以下の項目が評価され、総コレステロール(TC)、低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)、高密度リポタンパクコレステロール(HDL-C)、およびトリグリセリド(TG)の値が測定されます。
- 総コレステロール(TC): 血液中のコレステロールの総量を示す値です。正常範囲は一般的に220 mg/dL以下とされています。ただし、総コレステロール値だけでは脂質異常症の判断には不十分であり、他の検査値と合わせて評価されます。
- 低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C): 動脈硬化の原因となる「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。正常範囲は一般的に140 mg/dL以下ですが、個々のリスクに応じて目標値が変わることがあります。
- 高密度リポタンパクコレステロール(HDL-C): 「善玉コレステロール」とも呼ばれ、動脈硬化を防ぐ働きがあります。男性で40 mg/dL以上、女性で50 mg/dL以上が望ましい値とされています。
- トリグリセリド(TG): 脂肪の一種であり、エネルギー源となります。正常範囲は一般的に150 mg/dL以下です。
これらの検査は、空腹時の血液サンプルを用いて行われることが一般的です。空腹時に検査することで、食事による影響を受けず、より正確な値が測定されます。
検査項目 | 値 | 判定 |
---|---|---|
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症** | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界域高non-HDLコレステロール血症** |
*:10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。
**:スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。
- LDL-CはFriedewald式(TC-HDL-C-TG/5)または直接法で求める。
- TGが400mg/dLや食後採血の場合はnon-HDL(TC-HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。ただしスクリーニング時に高TG血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30 mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
また、採血検査以外の検査として、以下のようなものがあります。これらの検査は、脂質異常症による動脈硬化の進行や、心血管疾患のリスク評価を行う際に用いられ、採血検査と合わせて複合的に脂質異常症の病態把握とリスク評価に用いられます。
- 頸動脈超音波検査: 首の動脈である頸動脈の状態を超音波で調べる検査です。動脈の壁に脂肪がたまり、厚くなっているかどうかを評価し、動脈硬化の進行度を把握します。
- 心電図検査: 心臓の電気的活動を記録し、心臓の働きやリズムを評価する検査です。脂質異常症が心臓に影響を与えているかどうかを調べるために行われます。
- 心エコー検査: 超音波を用いて心臓の構造や機能を評価する検査です。心臓の働きが正常かどうか、動脈硬化が進行しているかどうかを調べることができます。
- CAVIを用いたABI測定:この検査では、足首と上腕の血圧を比較することで、下肢の血管の状態を評価します。CAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)は、動脈硬化の進行度を評価する指標で、ABI(Ankle-Brachial Index)と併用して血管の状態や血管年齢を把握することができます。
- 脂肪肝の検査: 肝臓に脂肪が蓄積されている状態である脂肪肝は、脂質異常症と関連があります。超音波検査やCT、MRIを用いて肝臓内の脂肪の蓄積状況を評価します。
医師はこれらの検査結果を元に、患者様の状況に応じた適切な治療や生活習慣の改善を指導します。
脂質異常症の治療法
生活習慣の改善
脂質異常症の治療の基本は、生活習慣の改善です。これには、健康的な食事、適度な運動、喫煙の禁止、アルコールの適度な摂取が含まれます。食事面では、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を減らし、不飽和脂肪酸やオメガ-3脂肪酸を含む食品を摂取することが重要です。また、運動は週に150分の中程度の有酸素運動が推奨されています。
薬物療法
生活習慣の改善だけではコントロールが難しい場合には、薬物療法が必要になります。脂質異常症の治療薬には、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)、ファイブリート、ニコチン酸、コレスティラミン(胆汁酸吸着剤)、エゼチミブ(コレステロール吸収阻害剤)などがあります。これらの薬は、それぞれ異なる作用機序でコレステロール値を下げる効果があります。医師の指示に従って適切な薬物を使用することが重要です。
原因疾患の治療
脂質異常症が他の病気によって引き起こされている場合(例えば、糖尿病や甲状腺機能低下症)、その原因疾患の治療が必要です。これにより、脂質異常症の症状も改善されることがあります。
家族性高コレステロール血症(FH)の治療
FHは遺伝性の脂質異常症で、通常の治療法ではコレステロール値を十分に下げることが難しい場合があります。この場合、より強力な薬物療法(PCSK9阻害剤など)や、LDLアフェレーシスという特殊な治療法が必要になることがあります。LDLアフェレーシスは、血液を体外に取り出し、コレステロールを除去した後、血液を体内に戻すという治療法です。この治療は、通常の薬物療法では効果が不十分な患者様や、薬物療法で副作用が発生している患者様に対して適用されます。
脂質異常症の治療は、患者様の症状やリスク要因に応じて適切な方法が選択されます。医師との綿密なコミュニケーションを通じて、最適な治療プランを立てることが重要です。また、治療を開始した後も定期的にコレステロール値や他のリスク要因をチェックし、必要に応じて治療方針を見直すことが大切です。
リスク区分別脂質管理目標値
治療方針の原則 | 管理区分 | 脂質管理目標値(mg/dL) | |||
---|---|---|---|---|---|
LDL-C | Non-HDL-C | TG | HDL-C | ||
一次予防 |
低リスク | <160 | <190 | <150 | ≧40 |
中リスク | <140 | <170 | |||
高リスク | <120 | <150 | |||
二次予防 生活習慣の是正とともに薬物療法を考慮する |
冠動脈疾患の既往 | <100 (<70)* |
<130 (<100)* |
*:家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の時に考慮する。糖尿病でも他のリスク病態(非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、主要危険因子の重複、喫煙)を合併するときはこれに準ずる。
- 一次予防における管理目標達成の手段は非薬物療法が基本であるが、低リスクにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は薬物療法を考慮するとともに、家族性高コレステロール血症の可能性を念頭においておくこと。
- まずLDL-Cの管理目標値を達成し、その後non-HDLの達成を目指す。
- これらの値はあくまでも到達努力目標値であり、一次予防(低・中リスク)においてはLDL-C低下率20~30%、二次予防においてはLDL-C低下率50%以上も目標値となり得る。
- 高齢者(75歳以上)については、ガイドライン第7章を参照。
脂質異常症の場合は薬物療法にあわせて、普段の生活習慣の改善を行って頂く必要があります。脂質を必要以上に生産させない薬、消化管から脂質の吸収を阻害してくれる薬などの薬を皆様の病状によって適切に使い分けています。また、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞の発症予防を目的に、血液をサラサラにしてくれる薬も併せて処方することがあります。
~食事内容で気を付けること~
脂質異常症の食事療法は、患者様のコレステロール値やトリグリセリド値を改善し、将来的な心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞等)のリスクを減らすことを目的としています。以下に、脂質異常症の食事療法において重要なポイントをいくつかご紹介します。
脂肪の質に注意する
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を減らし、不飽和脂肪酸(特にオメガ-3脂肪酸)の摂取を増やすことが望ましいです。飽和脂肪酸は動物性食品や加工食品に多く含まれており、トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに含まれています。オメガ-3脂肪酸は魚や亜麻仁油などに多く含まれています。
オメガ3脂肪酸は、健康に良いとされる不飽和脂肪酸の一種で、抗炎症作用や心臓病予防などの効果があります。
オメガ3脂肪酸を多く含む食品は以下のようなものがあります。
- 魚類
オメガ3脂肪酸が豊富に含まれる魚類には、鮭(サーモン)、サバ(マッケレル)、サンマ、イワシ、トビウオ(ヘリング)などがあります。これらの魚は、DHA(ドコサヘキサエン酸)およびEPA(エイコサペンタエン酸)という二つの主要なオメガ3脂肪酸を含んでいます。 - オイル類
オメガ3脂肪酸を含むオイルとしては、亜麻仁油(リンシードオイル)、えごま油(ペリラオイル)、クルミオイル、大豆油、カンオーラ油などがあります。これらのオイルは、主にALA(α-リノレン酸)というオメガ3脂肪酸を含んでいます。 - 亜麻仁(リンシード)
亜麻仁は、ALAが非常に豊富で、オイルの他にも亜麻仁をそのまま食べることでオメガ3脂肪酸を摂取することができます。 - クルミ
クルミにもALAが含まれており、オメガ3脂肪酸を含むナッツ類としては最も良い選択です。 - シード類
チアシードやヘンプシード(麻の種)もオメガ3脂肪酸が豊富で、スムージーやヨーグルトに混ぜて食べることができます。
オメガ3脂肪酸は、体内で十分に生成できないため、食事から摂取することが重要です。上記の食品を日常の食事に取り入れることで、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすことができます。
穀物類は全粒穀物を選ぶ
精白された穀物類よりも全粒穀物を選ぶことで、食物繊維やビタミン、ミネラルを十分に摂取することができます。全粒穀物はコレステロール値を下げる効果があります。
食物繊維の摂取を増やす
果物、野菜、豆類、全粒穀物などの食物繊維は、コレステロール値を下げる効果があります。特に、水溶性食物繊維(オート麦、大豆、果物、野菜など)は、コレステロールの吸収を抑える作用があります。
適切なタンパク質源を選ぶ
魚、鶏肉、豆類、低脂肪乳製品など、低脂肪かつ高品質なタンパク質源を選びましょう。これらの食品は、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす効果があります。
低脂肪かつ高品質なタンパク質食品は以下のようなものがあります。
- 鶏肉(特に鶏むね肉)
鶏むね肉は、脂肪が少なくタンパク質が豊富で、高品質なアミノ酸を含んでいます。皮を除去し、グリルや蒸し、煮物などの調理方法を選ぶことで、より低脂質になります。 - ささみ(鶏の内もも肉)
ささみも鶏むね肉同様に低脂質で高品質なタンパク質が豊富です。 - 豆腐
大豆製品の中でも豆腐は低脂質で、良質なタンパク質が含まれています。絹ごし豆腐や木綿豆腐を選ぶことで、様々な料理に使用できます。 - ヨーグルト(無脂肪または低脂肪)
無脂肪または低脂肪のヨーグルトは、乳製品の中で脂肪分が少なく、良質なタンパク質が含まれています。ただし、糖分が多いフレーバーヨーグルトは避け、無糖や低糖質のものを選ぶことが望ましいです。 - 魚類
マグロ、カツオ、タイなどの魚類は、低脂質で高品質なタンパク質が含まれており、特に白身魚は脂肪分が少ないです。また、青魚もオメガ3脂肪酸が豊富で健康に良い脂肪が含まれています。 - 卵白(アルブミン)
卵の白身部分は、低脂質で高品質なタンパク質が豊富です。卵全体を使う料理ではなく、白身だけを使うことで脂質を抑えることができます。
これらの食品を日常の食事に取り入れることで、低脂質で高品質なタンパク質を摂取することができます。食材や調理方法を工夫して、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
塩分の摂取を抑える
塩分の摂取を抑えることで、血圧をコントロールし、心血管疾患のリスクを減らすことができます。日本人の1日の塩分摂取量の目安は男性で8g、女性で7g以下とされています。外食や加工食品を減らし、自炊で塩分をコントロールしたり、代わりに出汁やスパイス、ハーブを使用して味付けを工夫することが望ましいです。
塩分を控えた食事の工夫には以下のようなものがあります。
- 調味料の選択と使用量の調整
塩分が少ない調味料(減塩醤油、減塩味噌など)を選び、使用量を控えめにすることで塩分摂取を減らすことができます。また、味付けには、酢やレモン汁など酸味を加えることで、塩分を減らしても美味しく感じることができます。 - 塩分の多い食品を避ける
加工食品やインスタント食品、塩辛いおつまみ類などは、塩分が多く含まれていることが一般的です。これらの食品を避けて、自然な食材を使った料理を心がけましょう。 - 蒸し料理や煮物を取り入れる
蒸し料理や煮物は、食材の旨みや甘みを引き出すことができ、少量の調味料で美味しく仕上がります。これにより、塩分摂取を抑えることができます。 - 野菜や果物を多く取り入れる
野菜や果物は、自然な甘みや旨みがあり、料理に彩りや風味を加えることができます。これにより、塩分を抑えた食事も満足感が高まります。 - 塩抜き調理法を活用する
煮干しや昆布などのだし材を使用する際、予め水につけて塩分を抜くことで、塩分を抑えたうまみを引き出すことができます。 - 味覚に慣れる時間を設ける
最初は物足りなく感じるかもしれませんが、徐々に減塩の味覚に慣れるよう、時間をかけて味の変化に適応しましょう。 - 料理の味見をする
調理中に味見をして、適切な塩分量を確認しながら調味料を加えることで、過剰な塩分摂取を防ぐことができます。 - 塩分を気にする食事の提供を受ける
外食時には、塩分控えめのメニューや健康志向のレストランを選ぶことで、塩分摂取を抑えることができます。 - 食品ラベルを確認する
食品の成分表を確認して、塩分含有量が少ない商品を選ぶことで、塩分摂取を抑えることができます。 - 塩分代替のスパイスやハーブを活用する
パセリ、バジル、ローズマリー、タイム、クミンなどのハーブやスパイスを使って、塩分を抑えた味付けを工夫してみましょう。これらは料理に風味を加えることができ、塩分の使用量を減らすことができます。 - 水分摂取を意識する
適切な水分摂取は、塩分摂取が多くなった際に、体内での塩分濃度を調整する助けになります。水やお茶、スープなど、無糖の飲み物をこまめに摂取しましょう。
これらの方法を実践することで、塩分摂取を抑えた食生活を維持し、健康に配慮した生活を送ることができます。皆様の生活に無理のないように、少しずつ取り組むことで、自然と塩分摂取を減らすことが可能になります。
アルコールの摂取を適度に
アルコールの過剰摂取は、トリグリセリド値を上げることがあります。アルコールの摂取は適度に抑え、1日の許容量(男性:2ドリンク以内、女性:1ドリンク以内)を守るように心掛けましょう。
食事のバランスを考える
偏った食事ではなく、バランスの良い食事を摂ることで、必要な栄養素を効果的に摂取できます。食事のバランスを整えることで、コレステロール値やトリグリセリド値の改善につながります。
適切なエネルギー摂取量を維持する
肥満は、脂質異常症のリスクを高める要因の一つです。適切なエネルギー摂取量を維持し、健康的な体重を保つことが重要です。
適切な体重と摂取カロリーは、年齢、性別、身長、活動量、基礎代謝などの個人差によって異なります。以下に、適切な体重の目安と摂取カロリーの計算方法を説明します。
適切な体重の目安
適切な体重の目安として
BMI(Body Mass Index:体格指数)が一般的に使用されます。
BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、次のように計算できます。
BMI = 体重(kg) / 身長(m)^2
BMIの範囲によって次のように分類されます
- 低体重 :BMI < 18.5
- 標準体重 :18.5 ≦ BMI < 25
- 過体重(肥満度1) :25 ≦ BMI < 30
- 肥満(肥満度2) :30 ≦ BMI < 35
- 高度肥満(肥満度3) :35 ≦ BMI
標準体重の範囲にあることが、健康を維持するための目安です。ただし、個々の体格や筋肉量、年齢や持病によって適切な体重は異なるため、医師や栄養士と相談することが重要です。
摂取カロリーの計算方法
摂取カロリーは、基礎代謝と活動量によって決まります。
基礎代謝は、安静時に消費されるカロリーで、年齢、性別、体重、身長によって異なります。
ハリス・ベネディクト方程式を使用して基礎代謝を計算できます。
男性の場合
基礎代謝 = 88.362 + (13.397 × 体重[kg]) + (4.799 × 身長[cm]) – (5.677 × 年齢)
女性の場合:
基礎代謝 = 447.593 + (9.247 × 体重[kg]) + (3.098 × 身長[cm]) – (4.330 × 年齢)
次に、活動量を考慮して摂取カロリーを計算します。
活動量は、日常生活での運動量に応じて、以下のように分類されます。
- 非常に軽い :1.2(ほとんど運動しない)
- 軽い :1.375(週1~3回程度の運動)
- 中程度 :1.55(週3~5回程度の運動)
- 重い :1.725(週6~7回程度の運動)
- 非常に重い :1.9(毎日激しい運動や肉体労働)
これらの活動量係数を基礎代謝に掛けることで、1日に必要な摂取カロリー(総エネルギー消費量)を計算できます。
摂取カロリー = 基礎代謝 × 活動量係数
例えば、30歳の男性で、体重70kg、身長175cm、週3~5回程度の運動を行っている場合、基礎代謝は約1,725kcal、活動量係数は1.55となります。この場合、摂取カロリーは約2,673kcalとなります。
摂取カロリーを適切に維持することは、健康的な体重を維持するために重要です。
ただし、個々の栄養ニーズや健康状態によって適切な摂取カロリーは異なるため、医師や栄養士と相談することが重要です。
また、バランスの良い食事を摂ることで、必要な栄養素を適切に摂取できるように注意しましょう。
これらの食事療法のポイントを実践することで、脂質異常症の改善や心血管疾患のリスク軽減に効果があります。
ただし、食事療法だけでは効果が不十分な場合もあるため、医師や栄養士と相談しながら、適切な治療法やサポートを受けることが大切です。
~運動を気をつけること~
脂質異常症の運動療法は、適切な運動によって、コレステロールや中性脂肪の値を改善し、心血管リスクを減らすことができます。以下に、脂質異常症における運動療法についてわかりやすく詳しく説明します。
有酸素運動
有酸素運動は、心肺機能を向上させるために最も効果的な運動です。例えば、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などがあります。これらの運動は、脂質異常症患者にとって有益で、1週間に3〜5回、1回あたり20〜60分程度行うことが推奨されています。歩行運動は脂質異常症の適切な運動療法の一つです。1日約1万歩歩くことで、消費エネルギーは約160〜240kcalになります。歩行運動は1回につき15〜30分間、1日2回行うことが理想的で、毎日行わなくても構いません。1週間に3日以上の頻度で歩行運動を行うことが望ましいとされています。歩行運動はいつでも、どこでも、ひとりでもできるため、通勤や通学、買い物など日常生活の中で取り入れやすい運動です。歩き方やスピードは体力や年齢に応じて調整できます。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、筋肉量を増やし、基礎代謝を向上させることで、脂質の代謝を改善する効果があります。週に2〜3回、大きな筋肉群を対象にした筋力トレーニングを行うことが効果的です。
柔軟性トレーニング
柔軟性トレーニングは、筋肉や関節の柔軟性を向上させ、運動の効果を高めることができます。ストレッチやヨガなどの柔軟性トレーニングを週に2〜3回行うことで、全身の筋肉の柔軟性を維持し、怪我の予防にも役立ちます。
運動計画の立案
運動療法を始める前に、医師や運動専門家と相談し、適切な運動計画を立案しましょう。運動の強度や頻度、持続時間を調整することで、効果的な運動療法が可能になります。
注意点
運動療法を始める前に、必ず医師の指導を受けてください。運動中に症状が悪化したり、心筋梗塞などのリスクがある場合があります。また、運動療法の禁止や制限が必要な患者もいるため、適切な運動計画の立案が重要です。
受診方法・ご相談
綾瀬中央診療所では脂質異常症治療を行い、地域の皆様の健康に貢献していきたく思っています。脂質異常症は発症初期段階での自覚症状を感じにくく、知らない間に病状が進行していきます。脂質異常症をしっかり治療していただくことが、将来的な心筋梗塞、脳梗塞の予防に繋がります。
自覚症状を感じた頃から治療を行っても手遅れとなってしまう場合もあります。健康診断等で中性脂肪・コレステロール値に異常があると指摘された方はいつでもお気軽にご相談下さい。
[総合お問い合わせ窓口・ご予約]
050-1864-7884
受付時間:9:00~18:15(土曜日は16:45まで、日曜日は土曜日は12:15まで、整形外科休診日:水・日・祝)